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この報告書は、2012年2月にAuserというイタリアのボランティア組織から発表された "Il rapporto sulle condizioni sociali delle anziani in Italia"(イタリアにおける高齢者の社会的状況に関する報告書)及び2010年2月にイタリア内務省より発表された"Gli anziani in Italia"(イタリアの高齢者)に基づいて作成されています。

1. 高齢化社会
ISTAT(イタリア国家統計局)によると、1961年の平均寿命が男性67.2歳・女性72.3歳であったのに対して、2010年時点においては男性78.8歳・女性84.1歳となっており、他の先進国同様に、国民の平均寿命が延びている。2009年のISTATの統計では、イタリア全人口の20.1%、五人に一人が65歳以上となっている。

年齢 人口 全人口比
65歳〜79歳 8,712,443人 14.51%
80歳〜99歳        3,358,982人 5.59%
100歳以上 13,773人 0.02%
高齢者全体 12,085,158人 20.13%
ちなみに欧州各国との比較において、最新の2011年統計では、イタリアにおける65歳以上の人口比率は20.3%で、ドイツの20.6%に次いで第二位、80歳以上に至っては、イタリアは6.0%(第二位はフランス5.4%)で第一位である。
欧州27カ国平均では、65歳以上は人口の17.4%で80歳以上は4.7%となっている。
= イタリアの人口分布図の推移 =
1988年におけるイタリアの人口分布。縦軸=年齢、横軸=人口、左が男性、右が女性。
◆1988年
◆2008年
◆2050年(予想図)
1988年には、最多人口年齢帯が20〜25歳であったが、2050年に予想される最多人口年齢帯は、75〜80歳になる。少子化及び平均寿命の延びにより、イタリアは高齢化社会への道を確実に進んでいる。
2. 高齢者の消費動向
2003〜2010年の8年間におけるISTATによる統計は、高齢者がこの期間により多くのお金を使ったのは、家賃・光熱費(2.9%増加)・交通費(0.7%増加)の費用項目だけにとどまっており、逆に一人暮らしの高齢者は、食費(1.7%減少)・衣料品(0.8%減少)・家具(0.8%減少)に対しては購買を控えている結果を表している。

従って、2010年度における月間平均支出額は、2003年度に比べて約284ユーロ(3万円)増加しているが、衣食住のうち住に占める割合が高くなっただけであり、食への支出を抑えなければならないことから見ても、良い傾向とは言えない。

2011年にPADOVA(パドヴァ)県でおこなわれた調査によれば、65歳以上の高齢者は一日に400カロリーも摂取量が不足しており、高齢者の食事が少な過ぎであり、栄養不足であると危惧している。当該調査によれば、特に肉・魚の摂取が不足している。

近年のイタリアにおける経済危機は、社会的弱者、特に高齢者にしわ寄せが来ており、高齢者の70%が月末までお金を持たせるのに苦労しており、その分食費への支出がかなり抑えられる結果となっている。
3. 高齢者の収入状況
2008年度のイタリア銀行(Banca d'Italia)による家計調査によると、65歳以上の高齢者を家長とする家族の年間収入源及び収入平均は以下の通りとなっている。
会社勤め 自営業 年金等 投資
1,385ユーロ 1,126ユーロ 16,456ユーロ 7,614ユーロ
5.2% 4.2% 61.9% 28.6%
上記の通り、65歳以上の高齢者が家長の家族においては、会社勤めや自営業などの労働を通じての収入は全体の10%にも満たず、大部分を年金等の社会保障に依存している。
= 年金(Pensione)の受給状況 =
2007年度における、イタリア各地方の受給人数及び年間受給額は以下の通り。
  受給者数 年間受給平均額(ユーロ)
北部 7,895,609 14,932
中部      3,277,842 15,162
南部 5,094,328 12,538
イタリア全体 16,267,779 14,229
全体平均としては、年間に約156万円(1ユーロ=110円換算)、月額13万円となる。
しかしながら、これはあくまでも平均金額であり、2011年度のINPS(社会保障庁)のデータによれば、30%以上の高齢者の月額年金額は900ユーロ(約9万9千円)に満たない状況であり、特に女性の高齢者は男性の高齢者と比較して、およそ月額600ユーロ(約6万6千円)年金額が少ないという結果となっている。


欧州で使用されている貧困の基準として、家庭収入平均の60%というパラメーターがあるが、この基準によれば月額915.52ユーロ(約10万円)未満の収入が、貧困家庭となる。これを当てはめると、27.3%の年金受給家庭が貧困であり、一人暮らしの高齢者に絞ると85.5%の家庭が貧困状況にある。

2010年のISTAT統計によれば、高齢者だけで構成されている家庭は、28%と4軒に1軒以上となっており、これはまだ増加する傾向にあり、年金を糧として生活する高齢者家庭にとっては厳しい状況の中にある。
4. 高齢者の労働状況
高齢者を家長とする家庭の約10%のみが、労働による収入を得ているという事実であるにせよ、人生においての就業の意味や、平均寿命の延びによる定年後の長い時間の使い方などの面から、高齢者の労働について考えるのは意味のあることである。

イタリアには65歳以上の高齢者がおよそ1千2百万人いる。2010年度のISTATの調査によると、高齢者人口の3.2%にあたる約38万人(男性29万人、女性9万人)が実際に仕事をしている、あるいは仕事を探している状況となっており、実際にはその大部分にあたる37万5千人が就業している。
= 高齢者の就業人数 =
  男性 女性 合計
北部 15万4千人 4万9千人 20万3千人
中部 7万人 2万4千人 9万4千人
南部 6万3千人 1万5千人 7万8千人
イタリア合計 28万7千人 8万8千人 37万5千人
= 社会奉仕活動 =
高齢者の労働の場は、報酬を得るための職場だけではなく、各市町村やボランティア協会などが主催する社会奉仕活動もある。2008年には、1,270の市町村で約4万8千人の高齢者がそういった活動に従事している。


活動内容としては、身障者に対する学校や家での補助・他の高齢者の補助・学校やスクールバスの警護・緑地帯のメンテナンス・若者向けの授業で伝統的な手工業の教授など多岐な分野に渡る。
5. 高齢者用の施設

A. 介護施設

2008年度の調査によれば、高齢者用の介護施設(Strutture Residenziali) は全国に5,858あり、ベッド数の合計は287,532台となっている。そのうち、100,282台のベッドは公営のもので、171,445台が民営、15,805台が第三セクターによる運営である。
州別に見た場合に、介護施設が多いところの順番は、
1.ピエモンテ州  (875施設、うち57%が民営)
2.ロンバルディア州 (741施設、うち72%が民営)
3.エミリア・ロマーニャ州 (595施設、うち56%が民営)
4.シチリア州  (499施設、うち85%が民営)
5.トスカーナ州  (439施設、うち61%が民営)
これを県別に見ると、ベッド数が多いところの順番は、
1.トリノ県 (331施設、ベッド数16,344台
2.ミラノ県  (158施設、ベッド数16,213台)
3.クーネオ県  (196施設、ベッド数9,484台)
4.ブレーシャ県  (120施設、ベッド数7,861台)
5.ヴィチェンツァ県 ( 81施設、ベッド数7,520台)
となる。
高齢者1,000人あたりのベッド数に関しては、イタリア全国平均が24台となっており、この数字を基準にした場合には、良い状況にある州はアルトアディジェ州が1,000人あたりベッド数49台、ピエモンテ州が45台、ヴァッレディアオスタ州が39台、逆に準備されているベッド数が少ないとことは、カンパーニャ州が1,000人あたりわずか8台、ラッツィオ州とカラブリア州の2州も、10台しかない状況にある。

ISTATの調査によれば、約1,700,000人の高齢者が自活できない状態にあるが、自活できない高齢者を収容できる施設は、3,409施設で全体の58%であり、大部分はイタリア北部に集中している。ヴァッレディアオスタ・バジリカータ・モリーセの各州にある施設は、そのほとんどが自活できない高齢者を収容できるのに対して、エミリアロマーニャ・マルケ・ヴェネト州は約75%、ラッツィオ州に至ってはわずか18%しか収容施設がなく、最下位である。

B. リクリエーション施設

介護施設(Strutture Residenziali)とは別に、元気なお年寄りで、仲間との触れ合いや社会生活の向上などを目的とした活動場所として、リクリエーション施設(Strutture non Residenziali)が存在する。近年は特に高齢者の増加に伴い、この種の施設が増加しており、1996年時点で3,365施設であったのが、2008年においては7,771施設と大幅増。   1施設あたり約160人、イタリア全体では約1,250,000人の高齢者がこれらの施設を利用する結果となっている。

施設を利用する高齢者のうち、65〜75歳においては大部分の利用者が女性であるのに対して、75〜85歳あるいは85歳以上の区分になると男性の利用者が大半となる結果が出ている。

利用者の州別の傾向を見ると、女性が大部分を占めるのはイタリア北部の州・トスカーナ州・サルデーニャ州であり、男性が大部分を占めるのはイタリア中南部の州となっている。
これは、イタリア女性の社会的状況を反映したものであり、北部女性は解放的であり仕事をしていた人が多く、年金生活に入ってからもこういった施設を利用することで社会との関わりを続けていこうとするのに対して、南部女性は主婦として家の面倒を見ることに慣れており、高齢になった場合には一層自分の生活習慣を変えることには否定的である。

以上
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