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1. 職業組合
 イタリアには法により承認された職業組合(Ordine professionale)という自治制度がある。この組織は、各職業分野における職人の専門性に関する質の高さを保証し、国が職業人名簿や職務規則に関する更新を、この組合に任せている。
職業組合は、司法省の監督下にある公共団体となる。

この"職業組合"という呼称は、通常は大学卒業以上の就学資格が必要とされ、なおかつ資格試験に合格しなければならない専門職に対して使用される。
その一方で、高等教育の就学終了証で充分な職業については、"職業団体"(Collegio professionale)という呼称が通常使用される。

しかしながら、このような専門用語の区別は、立法者の厳密な方式に従ったものではなく、例えばジャーナリスト組合(L'ordine dei giornalisti)という呼称は、職業組合のそれであるのに対して、職業の遂行において大学卒業資格が必須ではない。

2. 職業人名簿
 職業人名簿(Albo professionale)とは、法律で規定された職業を遂行することのできる全ての職人の名前やデータを集めて登録したものである。
国の法律は、定められた仕事、特に国民の安全や健康に関する仕事、を遂行しようとする者については、その仕事の職業人名簿への登録を義務付けている。

イタリアには、幾つかの職業組合が存在し、職業人名簿に登録されるには、通常一定の就学資格、場合により実務経験期間、国家試験の合格、及び道徳的な素養の保持が必要となる。

一定の専門職を遂行しようとする者については、職業人名簿への登録は不可欠であり、無登録での職業遂行は刑罰の対象となる。
この職業人名簿は公開されており、各職業組合のサイト上においても閲覧ができる。
国民の誰もが、ある人物が登録されているかどうか確認するために、名簿の要求ができる仕組みとなっている。

3.各職業組合
 職業人名簿への登録に関して、大学卒業資格が必要となる、国が承認した職業組合には以下のものがある。

● 公証人組合(Consiglio Nazionale del Notariato)
● 工学士組合(Consiglio Nazionale Ingegneri)
● 化学者組合(Consiglio Nazionale dei Chimici)
● 弁護士組合(Ordine Nazionale Forense, quale ordine degli avvocati)
● 建築士・都市計画士・景観士・保存士組合(Consiglio Nazionale Architetti, Pianificatori, Paesaggisti e Conservatori)
● 保険計理士組合(Ordine Nazionale degli Attuari)
● 外科・歯科医組合(Federazione Nazionale Ordine del Medici Chirurghi ed Odontoiatri)
● 獣医師組合(Federazione Nazionale Ordini Veterinari Italiani)
● 薬剤師組合(Federazione degli Ordini dei Farmacisti Italiani)
● ジャーナリスト組合(Ordine Nazionale dei Giornalisti)
● 地質学者組合(Consiglio Nazionale dei Geologi)
● 生物学者組合(Ordine Nazionale dei Biologi)
● 農学・森林学者組合(Ordine Nazionale dei Dottori Agronomi e Dottori Forestali)
● 労働コンサルタント組合(Ordine dei Consulenti del Lavoro)
● 心理学者組合(Ordine Nazionale degli Psicologi)
● ソーシャル・アシスタント組合(Ordine degli Assistenti Sociali)
● 食品工学者組合(Ordine dei Tecnologi Alimentari)
● 企業コンサルタント組合(Ordine dei consulenti in proprieta industriale)
● 会計士組合(Ordine dei Dottori Commercialisti e degli Esperti Contabili)

4.職業資格取得の具体例
 インターネット上にてイタリア語で情報が開示されている分について、特にイタリアの国情に関連している、あるいは日本と比較して資格制度に特色があると思われるものを記述する。
A. 公証人(Notaio)
国家資格
管轄: 司法省 (Ministero della Giustizia)

日本で言うところの公証人よりは職務範囲が広く、特に不動産などの売買契約には欠かせない存在であり、イタリアに住む人が公証人の世話にならなければならないケースは多い。日本のように公証人役場は存在せず、各公証人が自分の事務所を構えている。公証人の数は、司法省により管理・決定されており、2010年6月時点においてイタリア全土で4,554人がその職に就いている。

公証人になるための国家試験は、司法省が直接運営している。
国家試験を受ける資格は、法学部を卒業し公証人事務所にて18ヶ月以上の実務に就いている者となる。(卒業年に最大6ヶ月間の実務開始が認められる)
3つの筆記試験と1つの口答試験に合格した者が、公証人になれる。
試験期間は一年間となっているが、実際は一年半から二年という長期間に及ぶ。

公証人は職業として高収入を期待できるが、公証人の数が限定されていること、公証人事務所での実務経験が資格要件になっていることがあるためか、事実上この職業は世襲制のようなものになっており、イタリアにおいて職業上の特権階級になっている。

B. ジャーナリスト (Giornalisti)
国家資格
管轄: 司法省 (Ministero della Giustizia)

1963年2月3日付け法律第69号にて、イタリア・ジャーナリスト組合が設立された。
この協会は非営利の公共団体であり、専門職としてのジャーナリストとして活動するには、協会への登録が義務付けられている。

ジャーナリストの試験を受ける資格は、既に最低4名の資格を持つジャーナリストが働いている編集局で、新聞雑誌記者としての労働契約のもと、最低18ヶ月の実務経験を持つ者に限られる。卒業資格は特にどの学問を就学したかについては問われないが、大学卒業資格を持たない者は、一般文化に関する初歩的な試験を受けなければならない。資格試験はイタリア・ジャーナリスト協会により運営されるが、国家試験としての扱いとなる。8時間の筆記試験と口答試験に合格するとジャーナリストとしての資格を得る。

筆記試験内容は、
● 協会側から与えられた二つの記事のうち受験者が一つを選び、1行60文字 30行での記事要約。
● 協会側から提示される現実の事案に沿った、国内・国外政治、経済、時事ニュス、スポーツ、文化、科学、テクノロジー、演劇、のテーマのうち受験者が一つを選び、1行60文字45行での記事編集。
● 憲法、刑法、ジャーナリズムの倫理・道徳、義務、歴史、技術に関する6つの出題に対する回答。

口答試験は、面談方式にてジャーナリストとしての倫理・道徳感、報道規則、専門ジャーナリストとしてのテクニック・実践方法などに関する知識を問う。

現在イタリアには、イタリア・ジャーナリスト協会認定のジャーナリズム学校が21校ある。ジャーナリストを育てる環境、配信する記事への責任感を持つプロのジャーナリストを生み出す資格制度は、日本と比べると制度の厳しさを感じる新聞や雑誌といった紙媒体に代わり、インターネットの広がりによるネット配信力の強大化が進む中で、イタリアの資格制度はどのように変化していくのであろうか。

C. 建築士 (Architetto)
国家資格
管轄: 教育・大学・研究省 (Ministero dell'Istruzione, dell'Universita e della Ricerca)

建築士になるためには、教育・大学・研究省運営の国家試験に合格する必要がある。受験資格は、5年制の建築学部を卒業した者で、卒業後の実務経験は問われない。
なお、3年制の建築学部を卒業した者は、セクションBへの受験志願が可能で、(5年制の卒業生はセクションAの受験が可能)、合格者は下級建築士(Architetto Junior)と呼ばれる。下級建築士は、職業遂行上の制限があり、建築士の補助的な仕事等に限られる。

建築士(セクションA)の場合の試験内容については、筆記試験と口頭試験に分かれ、筆記試験の合格者が、別の日に設定される口答試験へと進む。
筆記試験は、1日8時間でおこなわれ、
● 民間建造物のプロジェクトや、都市規模での建築プロジェクトに関する設計実務
● 上記設計に関する構造あるいは設置規模の正当性に関する筆記問題
● 建築の文化や知識に関する筆記問題

口答試験は、筆記試験での課題に関する掘り下げた討議、及び建築家としての義務・法的観念に関する質問がおこなわれる。

イタリアの建築士試験の最大の特徴は、国家試験でありながら、試験を受ける都市により試験問題が違うということであり、受験者は必ずしも卒業した大学が所在する都市での試験を受けるわけではなく、多くの者が合格し易いと言われる都市での受験のために移動するようである。

これは、試験内容がその都市に関する課題になることにも関係があるようで、都市の規模や都市計画内容等で、試験内容に難易度の差が出ることに起因する。
この件については、建築士や建築士志望の人達が情報交換等をおこなうサイトhttp://www.professionearchitetto.itにて、国家試験としてのある種の欠陥ではないかというような不満意見が掲載されている。

D. 文化財修復士資格及び文化財修復補助士
(Restauratore di beni culturali e Collaboratore restauratore di beni culturali)

国家資格
監督者: 文化財・文化活動省 (Ministero per i beni e le attivita Culturali)
文化財・文化活動省令2009年3月30日付け第53号参照

文化財・文化活動省大臣令に従い、官報(Gazzetta Ufficiale)及び文化財・文化活動省のサイトにより年に一度資格試験の日付・要項が発表される。志願者は、官報発表から60日以内に大臣令にて受験に要求されている資格を保持している宣誓書を添えて、資格試験の申し込みをしなければならない。
要求されている資格は、文化財修復士を受験するのか、修復補助士を受験するのかによって、内容が異なる。


資格試験(Prova di idoneita)は、2つの筆記試験と1つの実技試験で構成される。
修復士志望者において、最初の筆記試験は1時間で100問の4択式。
● 保存に関する理論と実践 − 50問
● 美術・芸術の歴史 − 15問
● 科学、物理、生物学の基本原理 − 30問
● イタリア及び欧州の文化財に関する法律、会社経営・経済の知識 − 5問
1問につき正解した場合には1点が与えられ、次の試験に進むためには70点以上を取らなければならない。

二番目の筆記試験は、8時間のうちに異なる状況における修復計画に関する出題に対して回答していくもので、実技試験に進むためには70点以上の獲得が必要。

実技試験は、実際の文化財あるいは複製の修復に対しての理論実践。
二日間でそれぞれ8時間ずつが試験時間として与えられる。
70点以上の成績で合格者となる。
合格者となった者は、修復士資格取得者として文化財・文化活動省令での承認及び
官報での発表となる。

問題は、イタリアにおいて文化財修復士という地位が法律的に確立していないことにある。例えば、職業組合の中に文化財修復士組合は存在せず、職業人名簿も当然存在していない。文化財修復士協会(Associazione restauratori)という団体があり、専門職としての修復士を登録し、その名簿を公開しているが、法律で承認された職業組合ではない。

イタリアには多数の文化財が残っており、修復に関する法律は以前から少なからず発布されているが、修復士の専門職としての地位が確立されていない事実に対しては、驚きを覚える。上記資格試験にしても、受験できる資格がある者は、中央修復研究所( Istituto Centrale per il Restauro di Roma )といった入学できるのが少人数のエリート校を卒業した者に限られ、3年制の専門学校卒業では、修復士としての受験もできず、修復補助士の資格しか取れないのが現状のようであり、実際には多くの人達が無資格で仕事をしていることになる。

現在、各方面からの強い要求により修復士のための職業人名簿作製に向けて動いているようであるが、修復士資格新制度への移行時期や、名簿登録条件の設定など困難な問題が多いようで、その実現には至っていない。

5.職業資格の新しい動き
 今年6月の記事に、職業資格に関する自由化の話題が掲載された。
教育・大学・研究省(Ministero dell'Istruzione, dell'Universita e della Ricerca)に  よる調査によると、直近の5年間で大学を卒業して資格取得のために国家試験を受験した割合が20%以上減少しているとのこと。

この結果を受けて、政府が職業資格再編に向けて仮法案をまとめているようで、まずは弁護士と会計士について、職業人名簿登録のための国家試験の廃止を計画しているようである。

改変内容としては、弁護士・会計士が専門職として活動するに際して、
● 国家試験の廃止
● ある一定の研修期間を超過すれば活動可能
● 固定料金・最低料金の廃止、料金自由化
● 広告の許可
などが掲げられている。

この案に対しては、当然のように会計士組合は "既に会計士の数が多すぎる""なぜ会計士と弁護士だけの自由化なのか"、弁護士組合に至っては "弁護士が多すぎるという事態ではなく、全員が弁護士になってしまう" との反対意見を表明しており、この職業自由化に向けた今後の動向が注目される。

以上
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