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1.制度の主体
イタリアにおける医療制度の主体となる機関は、SSNと呼ばれる。
SSN = Servizio Sanitario Nazionale (国民保健サービス)
1978年の法律第833号(保健改正法)により導入され、第二次世界大戦後に設立されていた国家保健制度に取って代わった。

A. 医療制度の歴史
● 1958年 法律第259号により、イタリアにおいて初めて内務省(Ministero degli interni)から切り離される形で、保健省(Ministero della Sanita)が、設立された。
● 1968年 法律第132号(マリオッティ法 = Legge Mariotti 保健省大臣名)により、病院制度が再編される。当時まで援助団体や慈善団体により多くの場合病院が経営されていたが、それらを公共団体(病院事業体)に再編し、国や州及び財政計画の中において、各病院の組織・専門分野・機能を規律付けした。
● 1974年 法律第386号により、病院事業体に関連した相互補助団体の累積負債を帳消しにし、相互補助団体の経営審議会を解散させ、州の委員会に病院管理を委託した。
● 1978年 相互補助団体を廃止。SSNの設立。
● 2001年 保健省から衛生省(Ministero della Salute)に名称変更。

B.  SSNの目的
全ての国民を、その人の地位や収入に関係なく救うことができる、効果的で統一された医療制度を造りあげることであり、SSNは居住者に対して無料あるいは低料金で医療援助をおこない、国籍に関係なくイタリアへの旅行者に対する救急医療サービスを提供する。

C.  SSNの組織構成
SSNは単独行政権ではなく、国民の医療援助の目的を達成するために、いくつかの団体・組織から構成されている。
以下に、構成団体・組織を挙げる。

● 衛生省
  国の衛生計画策定に関与し、各州の権限を決定する。
● 国家レベルでの団体・組織
  上級衛生審議会( il Consiglio Superiore di Sanita = CSS)
  上級衛生協会( l'Istituto Superiore di Sanita = ISS)
  上級労働災害防止・労働安全協会
  (l'Istituto Superiore per la Prevenzione e Sicurezza del Lavoro = ISPEL)
  州衛生サービス協会(l'Agenzia per i Servizi Sanitari Regionali = ASSR)
  科学的救護・治療協会
  (gli Istituti di ricovero e cura a carattere scientifico = IRCCS)
  イタリア薬事協会(l'Agenzia Italiana del Farmaco = AIFA)
● 州レベルでの衛生サービス
  地方保健所 (ASL)
  病院団体 (AO)

D. 衛生計画
国の衛生サービスについては政令502/1992第一条により、衛生計画に基づくことが原則となっている。 この衛生計画には、国家衛生計画と州衛生計画がある。
国家衛生計画は3箇年計画(途中での変更可能)。州からの提案を受けた市長連盟や議会の委員会からの聴取による衛生大臣の案を基に、政府により採用される。
州の衛生計画は、国家衛生計画策定後150日以内に、国家衛生計画に沿う形で、州民のための衛生サービスへの関与方法及び実行方法に関する戦略を確定し、それを採用・適用しなければならない。

2. 国民健康保険登録
イタリア人は、SSN(国民保険サービス)への登録が義務付けられている。
我々EU諸国以外の外国人についても条件を満たしていれば、SSNへの登録が可能で、各種医療サービスを受けることができる。

●EU諸国以外の外国人のSSNへの登録について

申請場所: 居住地域最寄りの地方保健所(ASL)
申請条件: イタリア国内の労働者、あるいは帯同家族等で、正規の滞在許可書を
        所持している者
必要書類: 滞在許可書・納税番号・区役所発行の身分証明書

登録後、地方保健所よりホーム・ドクターの紹介及び健康保険証の公布を受ける。


健康保険証(Tessera Sanitaria)
健康保険証はカード式となっており、氏名・性別・出生地・誕生日・納税番号・有効期限の記載がある。EU以外の外国人の場合の有効期限は、滞在許可書の有効期限に準ずる。
3. ホーム・ドクター
前述の通り、ASL(地方保健所)にはホーム・ドクター(Medico di famiglia)の名簿が保管されており、国民健康保険への登録時にそのリストの中からホーム・ドクターを選ぶことができる。 選択が困難な場合には、ASLが住居最寄りのホーム・ドクターを選んで、ドクターの住所・氏名・電話番号を教えてくれる。
なお、一人のホーム・ドクターが担当する人数は、1,500人を超えてはならないことになっている。

ホーム・ドクターは、一般的な診療をおこなうもので、専門医ではない。
専門医が必要とされると判断された場合には、専門医への紹介をおこなう。
ホーム・ドクターによる診療・処方箋・一部の証明書作成などの行為に対する支払い義務はなく、無料である。

4. 保険診療と自由診療
国民健康保険の利く公立病院での診療については、加入者は無料(あるいは低料金)が原則となっている。 また、ホーム・ドクターの処方箋により薬局で薬を受け取る際についても、一部の薬を除いて無料である。

しかしながら、公立病院での診療については、手続きの煩雑さや病院内の混雑により待ち時間が長い、などの問題がある。従って、裕福な人の場合には医療費が高額となる健康保険の利かない私立病院あるいはクリニックでの診療(自由診療)を選択するケースがある。

5. 救急診療
救急診療は、Pronto soccorsoと呼ばれる。
公立の救急車利用、救急病院での診療については、国民健康保険に加入していない外国人であっても、原則無料にて医療サービスを受けることができる。
6. 保険医療の財源
SSNによる保険医療制度のための財源は、以下から構成される。
● 州事業税(IRAP)
● 所得税(IRPEF)
● 付加価値税(IVA)
● 患者個人負担分

保険医療の管理については、各州が責任を持つことになっており、財政面に関しても各州の管理の下、自主財源の強化がなされるような仕組みとなっている。給付金については、SSNから、各地方保健所(ASL)を通じて給付される。

イタリアにおいても、老齢化などの問題により、医療費の高騰が問題になっている。
各州の自主財源の強化が進められる中、医療費の占める割合の多い州においては、州事業税(IRAP)の増税に踏み切らなくてはならない州も出てきている。
ただ、保険医療の仕組み作りという点では、地方への権限委譲や歳入・歳出のバランスを取るための財源がはっきりしているということで、日本よりはイタリアのほうが進んでいるのではないだろうか。

7. イタリア保険医療の問題点
インターネットでイタリア語での検索をしていた際に見つけた一文に関して、ひとつの参考意見として記載する。

"イタリアの保険医療サービスは、病気の予防よりも治療に、健康促進よりも病気への対処に力点を置いている"

"不適格な担当医、あまりにも長い待機リスト、病院としての体を成していない組織が、多くの患者から非難されている"

"非効率な官僚主義、間違った管理、無秩序、高騰するコストが、保険医療に多くの問題点を生み出している"

"ここ10年の医薬品の進歩や、治療技術の革新にもかかわらず、保険医療は常に巨大な問題と対面している"

以上

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